腰痛の方はとても多く、当院にも多くの方が来院されます。腰痛には様々なタイプがあり一概には語れません。鍼灸治療で最も効果的なのは筋肉の問題に由来する腰痛です。腰痛をネットで調べるとトリガーポイント、筋膜リリースといった用語がよく出てきます。これらは筋肉の問題や、筋肉を覆う筋膜の機能に問題があり(多くは凝り固まり堅くなっていること由来します)、それらが腰痛の原因となっているのでそこに物理的な刺激をして緩め腰痛を改善しようという考えで治療が行われます。実はこれらはすべて鍼灸治療で対応することができます。筋肉の凝り固まった部分に鍼が届くと筋がすぐに緩んできます。凝り固まって日にちの浅いモノは的確にツボを選び鍼の当て方を工夫すると刺さなくても体表に鍼を当てると緩み、腰痛が改善することもあります。
そのほかに脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニアと診断された方でも針治療がよく効く場合があります。鍼治療により脊柱管の狭窄部位や飛び出た椎間板がなくなるわけではありません。脊柱管の狭窄の場合には神経に届いている血管の血流量が増えることで、下肢や腰部の疼痛が軽減したり、しびれが改善したりします。椎間板ヘルニアの場合は鍼の鎮痛作用で一時的に疼痛が軽減することをうまく利用すると時間の経過とともに飛び出た椎間板はなくなっていきます。以前は絶対的に手術の適応とされていた椎間板ヘルニアは疼痛の程度が我慢できて日常生活が送れる範囲であれば手術を行うことが少なく、椎間板が自然に緩解することを待つために保存的な治療を行うことがほとんどです。また器質的な病変があっても実はそれが疼痛原因にはなっていなくて、腰部の筋肉の緊張状態や筋膜のこわばりが併存しているために腰痛を自覚する場合があります。そのような場合は器質的病変が改善しなくても周囲の筋肉の状態が改善すると腰痛は消失します。
全身的に疲れている場合や冷えにより腰痛が出現する場合があります。そのような場合には全身的なバランスを調整したり、局所の冷えをとる鍼灸治療で対応すると程度によってはすぐに楽になります。
腰痛は内臓の病変が反映されて腰痛になっている場合もあって、その場合は次のような点がポイントです。
1,夜間就寝時、安静時も痛む
2,徐々にゆっくり増悪する。または動きに関係なく急に痛む。
3,腰痛以外の随伴症状がある。
4,鎮痛剤の効きが悪い。
こんな時は内臓の疾患も疑ってみる必要があります。